佳作

2015/06/10 Wed 

毎月、公募ガイド社が募集している掌編のコンテスト「TO-BE小説工房」で佳作でした。

今月の課題は「睡眠薬×禁止」
208編の応募があり、最優秀賞が1編、佳作が7編です。
審査は阿刀田高さん。

全く自信がなかったのでうれしい限りです。
賞金500円大切に使わせていただきます。
(最優秀賞をとって三万円ほしい)

以前は佳作の作品は公募ガイドのブログにアップされていたのですが、阿刀田高さんに代わってからはなくなりました。
日の目を見ずに終わるのもなんですので、久しぶりにアップしたいと思います。
というか、ブログにアップするのは初めてです。
お目汚しですが、お暇なときにお読みいただければうれしいです。


            『夢のつづき』

 不眠症の私は病院で睡眠薬を処方された。
「これ、新薬なんですよ。よく眠れるのはもちろんのこと、自分の見たいと思った夢を見られるんです。お値段は少し高くなりますが、きっとご満足いただけると思います」
 受付の女がもったいぶった手つきで、十二つぶ並んだ錠剤をカウンターに置いた。
「でもひとつだけ注意があります。続けて飲まないこと。一度目が覚めたら、十時間以上は間隔をあけてください。つまり二度寝禁止ってこと、いいですね」

 ここしばらく睡眠不足が続いていた。癖になってしまったのか、寝入りばなはいいのに、いつも途中で目が覚めその後朝まで寝られなくなってしまうのだ。一晩でもいい、ぐっすりと眠りたかった。

 その夜、私は一粒の睡眠薬を握りしめ祈った。アメリカの夢の国に行き、ミッキーやミニーに囲まれてすべてのアトラクションで遊べますように。欲をいえば貸切でお願い! 白い錠剤を口に含み一気に流し込む。それはのどから食道、そして胃の中にするすると落ちていった。

 抜けるような青空の下、にぎやかな音楽とともに私はダンスしている。かたわらにはミッキー、手招きするミニー。あっちからやってくるのはアリス、いやシンデレラ、いやオーロラ姫。手をつなぎぐるぐる回る、ぐるぐるぐるぐる……。

 心地よい目覚めだった。夢での高いテンションはずっと続き、一日中疲れを知らず働き抜いた。
 その後、私は毎晩睡眠薬を飲んだ。行ったことのない南の島で、見たこともないコバルトブルーの海に潜る。背中に羽が生えて、空中から自分の家を見下ろす。好きなアイドルとデートして、フライデーされる。なんでもありだ。

「最近、活き活きとしているね」声をかけてきたのは、憧れの先輩社員瀬川だった。もちろん私だけではなく、彼は既婚も未婚も含め女性社員すべての憧れだった。四十歳近いと聞いているが、独身で若々しい。
「あ、はい。好調です」今にも泡を吹いて倒れるのではないかと思うほど、私の胸は高鳴った。
「あまり無理をしないで。体は大事にね」
 仕事は優秀な上、人に対する気遣いもできる男だ。非の打ち所がなかった。この人と結婚する女性はきっと世界一幸せになれるのだろうな、と私は他人事のように思う。もちろん、彼にとって私なんか眼中にないのはわかってる。そうだ、夢なら叶う。私が彼と結婚すればいいのだ。こんな簡単なこと、どうして思いつかなかったのだろう。

 その夜、私はいつものように睡眠薬をにぎりしめ祈った。瀬川さんに告白され、付き合うことができますように。デートは夜の海がいいかな、それともヘリコプターで夜景ツアー。遠慮はいらない、好き放題、無理難題を言っても必ず叶う夢だ。

 シーン1 私は会社の廊下を歩いていた。そこに瀬川さんがやってきて、私にメモを渡す。メモには今夜八時、レストラン「ソメイユ」とあった。そこで私は告白される。
 シーン2 彼と手をつなぎ夜の街をそぞろ歩き。狭い通りでは、すれ違う車が危ないからと私を内側に入れ肩を抱いてくれる。
 シーン3 海岸に車を停め、ロマンチックな音楽の流れる中、ふたりで大人の会話をする。話が途切れたとき、ふいに彼がどこからか指輪を出してきてプロポーズをする。「結婚しよう」と。私はアメリカ人の女性がするような狂喜乱舞は決してせず、静かに微笑みうなずく。
 シーン4 教会で彼と指輪の交換をする。ライスシャワー、飛び立つ白いハト、咲き乱れる花、鳴り響く鐘の音。私のストーリーは完璧だ。

 夢は筋書き通りだった。物語は一晩中続き、クライマックスの指輪交換まで進んだ。そのときだ、突然、けたたましく鳴るベルの音で至福のときが中断された。今日は土曜日、目覚まし時計のセットの解除を忘れていたのだ。いったん起き上がったものの、どうしても続きが見たい、見ずにはいられない私は、受付の女が言った注意など無視をして二度寝を決めた。

 結婚式を終え、ハネムーン、新居、妊娠、出産と次々と出てくる新しいシーン。双子の男の子ができた。定年退職するころ、子どもたちが結婚し次々巣立っていった。残された私たちはいつまでもお互いをいたわり合い愛し合い理想的な夫婦生活を送っていた。やがて年老い、彼が先に旅立った。もう十分だ。この話はこれでジ・エンド。

 心地よい疲労感の中目覚めると、あたりは薄暗くなっていた。ベッドから起き上がるのも辛く、這うようにして洗面所へ向かった。すると鏡の中に見知らぬ女が映っていた。私はもう少しで悲鳴を上げるところだった。
 夢の中の老女が驚愕した顔でこちらを見ていた。

                             了
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コメント
ご無沙汰しております。
kannaさま

大変ご無沙汰しております。
じゃっくです。

「TO-BE小説工房」
佳作おめでとうございます!!v-315

阿刀田高さんはブラックなショートショートが
好きでよくBOOKオフで購入して読んでました。。。

『夢のつづき』拝読させていただきましたよv-435

素晴らしい新薬にも必ず副作用がありですね。

でも、途中目がさめてたら夢の続きを
みたくなる人間の心理をうまくついていますね。

私もこの場面なら必ず二度寝しますv-290

夢は追い続けるものなのかなぁ?

追伸)
話しは変わりますがアルジャーノ終わりましたね。
なんとなくみてしまいました。

思わず
「なんや、元に戻ったんかいな、しかも海の家って!!
どうするの?シーズンオフ?あかんやろ」
kannaさんに同感です!!

(ジャニーズの中居くんもそうでしたが
山Pも障害者役の熱演に好感がもてました・・・)

さあ、残るは「アイムホーム」と「マザーゲーム」ですね。

kannnaさんの
つっこみどこ満載のレビュー楽しみにしています。

よい休日をお過ごしくださいませ。













じゃっく様
うわあ、めちゃくちゃお久しぶりです。
お元気そうで安心いたしました。

拙作、読んでいただきありがとうございます。
選者が阿刀田高さんになってから、応募数が二倍ほどになりました。
人気があるんですね。
私もブラックユーモアは大好きです。

「アイムホーム」はいつも途中で寝てしまい、気づいたら仮面が映っています(笑)
「マザーゲーム」もいよいよですね。
今クールは他にもいろいろ観続けているのですが、つっこみがサボり気味に
なっています。
最終回だけは書いてみたいと思います。
またご感想を聞かせてください。

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